
「電気工事士はきついって本当?」
「危険は多い?休みは取れる?」
「ホワイト企業の見極め方は?」
——そんな不安や疑問に、データと現場の声をもとに答えます。
電気工事士の職場環境や評判は、会社や現場次第で大きく変わります。本記事では、電気工事業界特化の求人サイト「電工ナビ」のノウハウや口コミを踏まえて、その実態をわかりやすく整理していきます。
電気工事士の職場環境は本当にきつい?
電気工事士の業務は「きつい」と言われることもありますが、その中身を分けて見ると、実態がつかみやすくなります。
ここでは、体力の負担、危険・リスク、労働時間と休み、人間関係の4つに分けて、よくある不安に答えていきます。
体力面の負担はどれくらい?
配線や器具の搬入、脚立の上り下りなど、体を動かす場面は多めです。夏は暑さ、冬は寒さが負担になることもあります。
ただし、いつも重い物を一人で運ぶわけではありません。台車を使う、二人で持つ、高所作業は無理をしないなど、やり方で負担は下げられます。現場の種類でも差があります。
たとえば、住宅やテナント内装は細かな作業が中心、工場や屋外は移動や高さの負担が出やすい、といったイメージです。現場の声でも「最初は筋肉痛になったが、正しい姿勢と道具の使い方で慣れていった」という人が多いです。
危険やリスクは多い?
電気を扱う仕事なので、感電や転落などの危険はゼロではありません。国の発表でも、建設業の事故は多く、原因の上位は「墜落・転落」(※1)です。
だからこそ、検電を徹底する、足場を正しく組む、絶縁手袋やヘルメットを着用する、といった基本を意識することが大切です。
特に電気の事故は「設備の不具合」と「人のうっかり」が重なると起こりやすい、とも言われます。会社側の安全教育と、本人の注意の両方があるかを確認しましょう。
(※1)参考:厚生労働省「令和6年の労働災害発生状況を公表」
労働時間と休日の実態
現場の忙しさには“波”があります。工程が詰まる引き渡し前、天候で遅れた後の巻き返し、年度末の繁忙などは残業が増えがちです。
建設企業に対して国土交通省が行った調査(※2)では、月の平均残業が45時間を超える会社の割合は、技術者で14.9%、技能者で9.0%でした。
一方で、休日は「4週6休」が最も多く、「4週8休」は技術者21.2%、技能者25.8%と、少しずつ増えてきています。つまり「忙しい現場は本当に忙しい」が、会社や現場の運用で差が出る、というのが実情です。
(※2)出典:国土交通省「適正な工期設定等による働き方改革の推進に関する調査(令和5年度)」
人間関係や職場の雰囲気
電気工事は多くの場合、チームで進めます。朝礼で段取りと安全の確認、作業中は声かけとダブルチェック、終業前に片付けと振り返り。こうした当たり前が丁寧な現場は、未経験でも入りやすい雰囲気です。
良い会社を見分けるサインは、教え方が落ち着いている、質問しやすい、危ない作業を一人に任せない、休憩をきちんと取らせる、といったものです。
逆に、怒鳴り声が多い、手順を省かせる、長時間労働が続く、といった様子があれば要注意。現場見学やカジュアル面談ができる会社なら、早めに申し込み、実際の空気を確かめるのがおすすめです。
電気工事士の評判は?実際の声と体験談
ネット上では「きつい」「やめとけ」という声が目立つ一方で、「やりがいが大きい」「手に職で安定」という声も多くあります。ここでは、よく挙がる声を良い面・大変な面の両方からまとめました。
ネガティブな口コミ
電気工事士にネガティブな口コミとしては、主に次のようなものがあります。
- 体力的にきつい
夏の暑さや冬の寒さ、脚立作業や資材運びでへとへとになる。最初は筋肉痛が続く。 - 残業・早出が出やすい
工期前やトラブル対応で帰りが遅くなる時期がある。天候でずれた工程の巻き返しが大変。 - 現場移動が大変
直行直帰や応援で移動が多い。車移動の時間が長く感じる。 - 指導が厳しい現場もある
安全と品質が最優先なので、手順を守らないと強く注意される。言い方がきついと感じる人も。 - 安全への緊張感
感電や転落のリスクを常に意識する必要があり、気が抜けない。
ポジティブな口コミ
反対に、電気工事士の業務にポジティブな口コミとしては、次のようなものがあります。
- 完成物が目に見える達成感
業務が完了し、設備が動く瞬間はうれしい。形に残る仕事だと感じる。 - 手に職で長く働ける
資格と経験がセットで評価される。転職や独立の道もある。 - 需要が安定
住宅、店舗、工場、再エネなど仕事の場が広い。景気の波を受けにくい現場もある。 - 収入の伸びしろ
資格手当、夜間・出張・現場手当などが加わると年収が上がりやすい。 - チームで働く安心感
一人で抱え込まず、段取りや安全を声かけで補い合う文化がある。
現役工事士の実体験コメント
20代・未経験入社の声
「最初の3カ月は道具名と手順を覚えるだけで精一杯。でも同行で少しずつ任され、半年で照明の取り付けを一人でできるように。先輩が“安全第一、急がば回れ”と繰り返し言ってくれたのが心強かった」
30代・異業種転職の声
「家族がいるので収入が不安だったが、第二種を取ってから応募。資格手当と残業代がきちんと出る会社を選べて、前職より年収は上がった。面接で“繁忙期の働き方”を詳しく聞いたのが正解だった」
40代・現場復帰
「体力は若い頃ほどではないが、段取りと準備でカバー。無理な持ち上げは2人で、台車を使う。経験があると現場の流れを読むのが早く、任される仕事の幅が広い。」
働きやすい企業とブラック企業の違いとは?
ホワイト企業の特徴
- 安全が最優先:朝礼やKY(危険予知)、保護具の支給・点検、無理な単独作業を避けるなどが当たり前。
- 教育がある:入社後の研修、先輩の同行期間、作業手順書、資格支援(受験費用補助・合格手当)。
- 働き方の“見える化”:勤怠は打刻、残業は申請と承認、移動時間や待機時間の扱いが明確。
- 工程と人員に余裕:忙しい時は増員・応援で調整。雨天振替や代休の取り方が決まっている。
- 制度が文字で残っている:平均残業時間、年間休日、手当の基準、評価制度が求人票や面接資料に明記。
こうした会社は、残業や休日の運用がぶれにくく、未経験でも安心して慣れていけます。
ブラック企業の典型例
- 長時間が常態:繁忙期の説明があいまい、残業時間の“実績”を答えない。みなし残業を超えても説明なし。
- 安全が後回し:足場や検電を省略、保護具は“自腹”、危ない作業を一人に任せる。
- 指導が乱暴:怒鳴りや罰の文化。手順より“速さ”だけを求める。
- 費用の押しつけ:私物工具の強制、移動・待機の時間や費用が自己負担。
厚生労働省の発表によれば、令和6年度に建設業 1,923事業場 を監督指導し、そのうち 81.5%(1,567事業場)で労働基準関係法令違反が確認されました。また、38.9%(749事業場)では違法な時間外労働が見つかり、9.7%(186事業場)は月80時間を超える時間外・休日労働がありました(※3)。
こうした企業への入社を避けるためにも、疑問点は必ず採用面接時に確認しましょう。
良い会社は、安全・教育・数字の説明がそろっています。迷ったら「残業の実績」「休日と代休の運用」「離職・定着の数字」を聞いてください。答えがはっきりしている会社ほど、入社後のギャップが小さくなります。
(※3)厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する令和6年度の監督指導結果を公表します」
職場環境の見極め方:求人票や面接で確認すべきこと
ここでは、応募する企業を見極めるために、求人票を見る際や面接の際に必ず確認しておきたいポイントを紹介します。
求人票で確認する3つのポイント
求人票は会社の“入り口情報”です。最低限、次の3つのポイントは確認し、複数社を比較するようにしましょう。
ポイント1:残業の目安
月の平均残業時間や繁忙期の目安が書かれているか(なければ面接で確認)
ポイント2:休みのルール
年間休日数や代休の取り方が示されているか
ポイント3:育成
先輩の同行期間や資格支援(受験費用補助・合格手当)の有無が書かれているか
それぞれ、具体的な数字や制度の内容が詳しく出ていれば安心材料になります。もし記載がなければ「面接で聞けばいいチェックリスト」と考えましょう。
大切なのは、「求人票で分かる範囲を確認 → 不明な点は面接で質問」と2段階で確かめることです。
採用面接で確認する3つのポイント
採用面接は、現場がどのような状況かを口頭で確認できる数少ないチャンスです。次のような質問を投げかけてみましょう。
ポイント1:残業と繁忙期
「直近1年で、通常月と繁忙期の平均残業はどれくらいですか」
ポイント2:代休の取り方
「代休はいつ、どうやって取りますか。決まりはありますか」
ポイント3:育成の流れ
「未経験の同行期間はどれくらいですか。誰が教えてくれますか」
良い会社は、具体的な数字と手順で返してくれます。たとえば「繁忙は3月と9月で月30時間前後。代休は翌月末までに消化。同行は1~2か月で班長が担当」といった回答です。
採用前に現場を訪問できたら確認したいポイント
カジュアル面談や職場見学のチャンスがあれば、短時間でも次の3点をチェックすると雰囲気がつかめます。
ポイント1:工具や資材が整理されているか
片付けが行き届いている現場は、安全意識や段取りの良さにつながります。
ポイント2:作業中に声かけや確認があるか
チームワークを重視している現場は、未経験者にも質問しやすい空気があります。
ポイント3:休憩がきちんと取れているか
休憩が守られている職場は、無理のない働き方を大切にしている証拠です。
もし3つのうち2つ以上に当てはまれば、基本的な環境は整っていると考えて良いでしょう。可能であれば朝礼や終礼の様子も見学し、安全や段取りを大切にしているか確認するのがおすすめです。
電気工事士として長く働くために
電気工事士のキャリアは「資格の取得」「活躍する分野の選び方」「自分に合った働き方」の3つをどう組み合わせるかで、大きく変わってきます。
未経験から始めた人でも、計画的にステップを踏めば10年、20年と長く安定して働き続けることができます。
資格取得によるステップアップ
まず大きな分かれ道となるのが資格です。未経験から入る場合、多くの人が最初に目指すのは第二種電気工事士です。この資格があれば、住宅や小規模店舗の電気工事を一人で担当できるようになり、仕事の幅が一気に広がります。
さらに経験を重ねた後に挑戦できるのが第一種電気工事士です。こちらはビルや工場といった大規模施設まで担当範囲が広がるため、責任は重くなりますが、その分収入やキャリアの選択肢も増えます。
加えて、施工管理技士や電気主任技術者(電験)といった資格を取得すれば、現場監督や設備管理といった“現場のまとめ役”にも進めます。
将来性のある分野に強くなる
次に考えたいのが、どの分野でキャリアを築くかという点です。ここ数年で特に伸びているのが、再生可能エネルギーや省エネ設備の分野です。
太陽光発電や蓄電池の設置工事、LEDや高効率空調の導入などは、企業や自治体の脱炭素の取り組みと直結しており、今後も需要が減ることは考えにくいでしょう。
また、近年は電気工事にDX(デジタル化)の波が押し寄せています。たとえば工場の自動制御設備や遠隔監視システムの導入など、ITと電気の知識を組み合わせた仕事が増えています。
自分に合ったキャリア選択のポイント
ただし、すべての人が同じ道を進むわけではありません。
若いうちは体力を活かして現場で経験を積み、その後管理職や設計に移る人もいれば、早くから資格を取り、知識を武器に専門性を深めていく人もいます。家庭を持つ人にとっては、夜勤や出張で収入を増やすよりも、休日や残業の安定を優先することもあるでしょう。
大切なのは、自分が何を重視するかを整理することです。収入、安定、成長分野への挑戦、家庭との両立。優先順位を決めたうえで、求人票や面接で「その会社が自分の希望と合っているか」を確かめるのが、後悔しないキャリア選択につながります。
電気工事士の職場環境について、よくある質問
電気工事士を目指す方から多く寄せられる質問をまとめました。未経験の方が特に気になるポイントをQ&A形式で解説します。
Q. 未経験で入社した場合、どんな環境で学べますか?
未経験から電気工事士のキャリアをスタートする人は少なくありません。多くの会社では、最初の数か月は先輩社員に同行しながら現場の流れを学ぶ仕組みがあります。
工具の名前や使い方、配線の補助作業など、基礎的なことから少しずつ経験を積んでいけるのが一般的です。
また、資格取得を支援する制度を設けている会社も多く、受験費用の補助や合格時の手当が支給されるケースもあります。こうした教育体制とサポートが整っていれば、未経験者でも安心して成長していけます。
Q. 職場の人間関係や雰囲気は?
電気工事の仕事は、多くの場合チームで動きます。現場では先輩や同僚と声をかけ合いながら作業を進めるため、人間関係が働きやすさに直結します。特に未経験のうちは、必ず先輩のサポートを受けながら安全に作業を学んでいくのが一般的です。
一方で、経験を積んでいくと小規模な案件や単純な作業では1人で現場を任されることもあります。そうした場合でも、チーム全体での段取りや連絡体制が整っていれば安心して進められます。
もちろん会社や現場によって雰囲気は異なりますが、見学や面接時に社員同士の会話や空気感を観察すると、その職場の特徴がよく分かります。
Q. 女性も働ける環境ですか?
電気工事士は体力を使う場面がある仕事ですが、近年は女性の活躍も少しずつ広がっています。背景には、工具や資材の軽量化、安全設備の充実など、職場環境の改善があります。
特に住宅リフォームや内装関連の工事では、細やかな作業や丁寧さが求められるため、女性が力を発揮しやすい分野として注目されています。
実際に女性を積極的に採用する企業も増えており、「未経験でも挑戦できる環境を整える」動きが強まっています。まだ人数は少ないものの、今後はさらに女性電気工事士の存在感が大きくなっていくと考えられます。
安心して働ける職場環境の企業を選ぶために
電気工事士の働きやすさは、資格の有無や仕事内容以上に「職場の環境」で大きく変わります。残業時間や休みの取り方、安全への取り組み、人間関係の雰囲気などは会社によって差があり、同じ電気工事の仕事でも働き心地はまったく違います。
インターネット上では「きつい」「やめとけ」といった声も目立ちますが、それだけで判断するのはもったいないことです。大切なのは、求人票に書かれた数字や制度を確認し、面接や面談で具体的に質問すること。データと実際の声を組み合わせて判断していけば、自分に合った安心できる職場を選ぶことができます。
もし「どの会社なら安心して働けるのか知りたい」と思ったら、電気業界に特化した求人サイト「電工ナビ」を活用するのがおすすめです。未経験歓迎や資格支援ありなどの条件で簡単に検索でき、現場の教育体制や社員の声といった情報も確認できます。
あなたに合った働きやすい職場を探す第一歩を、ぜひ電工ナビの求人検索から始めてみてください。

(※1)厚生労働省「令和6年の労働災害発生状況を公表」
(※2)国土交通省「適正な工期設定等による働き方改革の推進に関する調査(令和5年度)」
(※3)厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する令和6年度の監督指導結果を公表します」